WEAKEND
- 創作コンテスト2011 -

(完全な妄想、捏造です)


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「サタン様、今回の指揮官の魔王八騎士スピが帰還しました。」


「ああ。騎士スピよ、よくやった。
またオレの魔界統一に一歩近づいた。

どうやら苦しい戦いだったらしいな。

・・・ムート、後は任せたぞ。」


「はい。スピ行くぞ。」


ひざまずき無言で話を聞いていたスピは立ち上がりムートともに今回の兵士たちの元へ向かう



歩きながらムートは言う


「今回の作戦を聞く限りはもっと楽な戦いになると思っていたのだが?」

スピは重い口調で答える

「申し訳ありません、私の責任です。
兵を見る目が甘かったようです。」


「やはりそうか。
我らのように急激に勢力を拡大している軍にはこのような問題はつきものだ。

新しく増えた兵はこれから信用できる兵とそうでない兵を見分けていけばいい。

今回のことは気にするな。
後始末はオレがやる。」


「・・・はい。」


今回の兵士たちは城の外に隊ごとに並べられていた


ムートとスピはそれを城壁から見下ろす


自分の活躍を自慢したりと思い思いに雑談する兵士たち


「しかし作戦無視しちまってよかったのか?」

「何言ってんだよ、オレたち第13部隊はこの前までは西の魔王軍の主力なんだぜ。
あんな地味な作戦守れるかよ。」


「そうそう、だからオレたちはほとんど無傷で終えれたんだぜ。」


「まぁ救援に来た隊はかなり死んだらしいけどな!」

「まじだせぇよなぁ〜!
よわっちい奴らだ!!」


〔はっはっはっはっは!〕


「なるほど奴らだな。」

「・・・はい。」


「スピ、お前にはお前のやり方があるだろう。

だがオレが最も効率のよいやり方を見せてやろう。

あの戦士ヴァルッサにさえ忠誠を誓わせるやり方だ。」


一歩前に出るムート



それを見てひざまずく兵



睨みつける兵



嘲笑う兵



「諸君。今回の戦い、ご苦労だった。」

得意げな顔をする兵たち


「だが残念なことに思った以上に苦戦をしたようだ。

我らサタン軍は後にこの魔界を統べる存在だ。

まさかただ勝てばいいと思っているわけではないだろうな。

今日は諸君らが戦う意味を教えよう。

第13部隊前に出ろ。」


気だるそうな顔をしながら前にでる第13部隊の者たち


「お咎めっすか?
早く済ませてくださいよ。

まぁ大人しくしてるかわかんないですけどね。」


不敵に笑う第13部隊


「無論咎めるつもりはないさ。
貴様等は将棋の駒に対して怒鳴りつけるのか?
それよりもまず思い通りに動かない駒など捨てるべきだろう。」


「なんだとゴラァ!!」

その言葉を聞いて次々に第13部隊、そしてそれ以外の兵士たちからも罵声が飛び交う





ただひざまずき震える兵士たちを除いて


静かに右手を第13部隊に向けるムート


その第13部隊の足元から光の柱が生じる


その光の柱は余計な者を誰一人巻き込まず


そして第13部隊を誰一人残すことなく飲み込んだ



とりわけ大きな音が起きるわけでもなくその光の柱はしばらくして消えた


その光の柱の後には武器の破片一つ、肉片一つも残ってはいなかった



静まりかえる兵士たち


「諸君がサタン軍で戦う意味はサタン様をこの魔界の頂点にするためだ。
そして作戦に従う意味はその戦闘を思いのままに支配するため。

なぜそうするのかその意味も知りたいか?」


スピですら汗が吹き出すほどの殺気を出しつづけるムート


次々に兵士たちは力が抜けたようにひざまずいていく


「捨てられたくなければ戦え。意味はそれだけだ。

そして生き残るためにはどうすればいいか頭を使え。

ただの駒でいたくなければな。」


それにスピが続ける

「考えた結果が作戦と違うならば上に伝えてくれ。

そうすることが我々の勝利につながる。」

そう言い残しムートとスピが立ち去るとき


もはや顔を上げている兵士はいなかった。




二人の歩く音だけが廊下に響きわたる




王の間に入ろうとするムートにスピが問い掛ける


「お疲れ様でした。
ムート様・・・一つお伺いしたいことが。」


「なんだ?」


「もしただの駒が自分でしっかりと考え、よい判断をくだしたり、あるいは高い戦闘能力を身につけたとき、その駒はムート様にとってどのような存在になるのでしょうか?」




少しの沈黙のあとムートは答える


「それは使える駒だ。」


扉が閉まる音


(・・・きっと戦士も我々騎士すらも駒なのだろうな

いやきっとあの人は自分自身のことも・・・)


「ふっ・・・あの高みにはまだまだ遠いな。」


一人残ったスピはあの日の自分の決断は間違っていなかったと改めて実感した



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ずいぶんと簡単に命を奪うんですね。」


城内の見回りをしていたムートに騎士の一人が話しかける

「・・・フォレスか。
それは昼間の話か?

それとも・・・。」


「そうですね〜。昼のこともですがオレがこの軍に入ってからの感想ですよ。」


「気に入らないか?
オレはただサタン様の障害となるものを排除しているだけなのだがな。」


「・・・そうやって孤児の村も滅ぼしたんですか?」

「あの村は惜しかった。
あれだけの戦闘力を消してしまったのは実に残念だ。

やはり戦士を信用するべきではなかったな。


・・・あの村に知り合いでもいたのか?」



「・・・まぁ少し。
でも滅ぼされるまで知らなかったんですけどね。」


「そうか、では聞こう。
もしお前に知り合いがいるとわかっていてあの村への攻撃の命令が出ていたらどうした?」


「・・・やりましたよ。
オレには他に守らなくてはいけない物がある。」


「そうだ、それでいい。
己の目的のためには他者を犠牲にするしかないんだ。


お前は優しすぎる。


この魔界に正義や悪などという概念はない。

あるのは強き者だけが生き残るという現実だけだ。

お前ももうずいぶんと多くの命を奪ってきたのではないか?」


「わかってますよ。
それでもオレは、奪うためにこの軍に来たわけじゃ・・・!」


緊張がはしる


「オレのやり方が気に入らないならそれでいい。

それでお前がオレに逆らうほどのバカなどとは思っていない。

これでいいんだ。

我々サタン軍は決してベタつかない、このピリついた関係がちょうどい・・・」

そこにムートのセリフを遮り一人の乱入者が現れる


「やっほ〜ムート君〜!」

その乱入者はムートのセリフとはまるで逆の雰囲気を出しながらムートに飛びつく


「・・・今大事な話をしていたのだが?」

呆れ顔で言うムート


「なに〜?
イケメン二人で内緒話?」

フォレスは少し笑う


「なんでもありませんよ、ユイさん。
ムートさん、今日は失礼しました。」


フォレスが立ち去ろうとするときもう一人の乱入者が現れた


「失礼、ムート様急ぎのご用が。」


「うわ、もうビックリしたなぁ!
スピ〜!瞬移なんかで現れないでよ。」


「急ぎの用なんでね。
そのことでサタン様がお呼びです。」


「ああわかった。すぐに行こう。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「サタン様、ただいま戻りました。」


「ああ、話しはすでに聞いたか?」


「はい。北西から敵勢力が進攻中とのことですね。」


「そうだ。どうやらこのままオレたちに滅ぼされるのを待っているよりは一か八かの奇襲らしいな。」


「勝てない相手ではありませんが我々には好ましくないタイミングですね。

どの兵も各地の遠征帰りで疲労しています。

攻められるのは久しぶりですからね。
迂闊でした。」


「だが騎士も戦士も帰還を急がせば全員そろう。
そこでだ。
最近退屈なオレのために一つ余興をこうじてもらおうか・・・。」



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魔王の間の前でムートを待つ騎士三人


「遅いなぁムート君。

言ってくれれば敵なんかすぐ全員ユイが凍り付けにしてきてあげるのに。」


「・・・あなたが言うと本当にやってしまいそうで恐ろしいですよ。」


「あのさー、早く準備始めなくていいわけ?」


「何事もまずはサタン様のご意思だ。」


「ふ〜ん、スピってめんどくさい性格だよね。」


「あ、それユイも思った。それになんか暗い?」


「・・・・・・。」


その時ちょうど魔王の間からムートが出てくる


「スピ、城にいる騎士と戦士を全員集めろ。
まだ帰ってきていないやつらは急がせろ。
・・・どうした?」


「いえすみません、少し考え事を。了解しました。」



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〔ザワザワ〕

「なぁほんとにオレたち何もしなくていいのか?」

「そういう命令だしな。」

特殊な魔法で映像が映し出された水晶があるいくつかの広間に分けられ集められた兵士たち


そして城の前に並ぶ騎士と戦士、その後方に立つムート


そこへ敵勢力が現れる


「魔王様、サタン城が見えました!」


「よし、第一軍、及び第二軍突撃開始!!

本隊を残し第三、四、五軍は四方に別れ待機!」



〔うおおおおおお!!〕


なだれ込んでくる敵の大群

「おいまだか!早く暴れさせろ!」

ムートに突撃を要求する魔王九戦士ヴァルッサ



「待て・・・。

よし、行け魔王九戦士。
貴様らの力見せてみろ。」

「かかかかかかか!
なにも考えずただ暴れる!
こんな戦いを待ってたんだ!!
ぐおおおおぉぉぉ!!」


狂気の力を解放するヴァルッサ


ヴァルッサの叫びとともに突撃を開始する戦士たち



そう一般兵士は一人としてこの戦いに参加しないのだ

これが銀髪の魔王サタンの余興の始まりであった





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